ご先祖さまから引き継いだ築80年以上の古民家。その古民家を前にO様はおっしゃいました。
「家と庭を作り変えてしまうことは簡単な事です。ですが、この家と庭を残し守り続けることが私に課せられた使命なんじゃないかと思うんです。だから立派に復活させて欲しい」
城下町だった平戸には数多くの武家屋敷が存在します。それらの保存、活用に携われることは私たちにとっても嬉しいこと。なんとしても立派に再生しようとの思いでプロジェクトはスタートしました。
プロジェクトのテーマは「歴史ある庭園との調和」。そうお屋敷も立派なのですが、それ以上に価値があるのが庭園。平戸市の文化財にも指定された由緒ある庭園なのです。その風格に負けることのない新しい武家屋敷をして復活させなければなりません。
「リフォームは蓋を開けてみないと分からない」といいますが、柱の下部にはシロアリ被害があったり、梁も傷んでいました。予想以上に難しいリフォームとなりましたが、それがかえって私たちを燃えさせてくれました。冒頭のO様の使命に応える仕事をするために、傷んだ柱や梁は取り替えるのではなく継ぎ手で復旧させるなど、「できる限り残せるところは残す」ことを合い言葉に取り組みました。
美しく蘇った客間から眺める庭園は格別。日本の伝統建築ならではの静かな時が、新たに流れ始めました。